2013/02/13

制服のマネキン/乃木坂46


 明日はバレンタイン。自分は体調崩してそれどころではないわけですが、皆様は是非幸も不幸も楽しんでお過ごし下さい。で、明日取り上げたい曲があるので、今日はその前哨戦。
 「制服のマネキン」(以下マネキン)はリリースこそ去年(20121219日)だけど今でも普通にオリコン20位以内に登場するロングヒットなので、一応「最新ヒット」ということで。

女 <男「(欲望から解放されて、俺の)欲望に身を委ねろ」→ 女>


 冒頭15秒の開放的なメロディは「拘束と解放」というテーマを持つ楽曲において、「解放」を象徴する部分となっている。この曲が歌詞のややヘヴィな内容に負けず、楽しげなフィーリングを保っているのは、何度もリピートしたくなるような魅力のあるこのイントロに依る所が大きい。
 歌詞に目を通すと、一番では主人公である男(おそらく教師)と女子生徒(つまり彼の教え子)が恋人になるまでの期間を、二番以降では恋人になってなおじっれたい女に主人公が肉体関係を迫る様子が、それぞれ描かれている。いずれのフェーズでも決め言葉は「マネキンになるな。感情を解放しろ」である。
 マイナー調のメロディはこの二人の関係性全体に漂う不安感や背徳に対応している。間奏で表れるクラシック・ギターのソロは、機械的なエレポップのプロダクションに合わさることでその儚げな響きを強調し、(男性目線から綴られる楽曲の中で唯一)女性側の心情に対応した箇所になっている。そしてそれすらも『僕に任せろ』という男の言葉でブツリと切られてしまう。

 とここまで来て、この曲が「制服をトレードマークにしたアイドル(=乃木坂46)」によって歌われているという入れ子の構造に辿り着く。歌詞の主体は完全に男性なのに、歌うのは女性の側なのである。
 まず先に確認しておくと、実はこの構造自体はAKB48系(あるいは以降)のグループ・アイドルの楽曲ではデフォルトとなっている。これ以上は長くなるのでここには書かないが、この構造は一種の発明であり、その入れ子の構造による複雑性こそが、彼女たちの楽曲が現代的な理由の一つなのである。
 話を「マネキン」に戻す。この歌い手が女性だとしたら、こいつは何故「男性目線の、しかも男性の欲望にまみれた歌詞」を歌っているのだろうか?「男性に強要されて/自主的に」?「本気で/ゲーム的に」?など様々な解釈は考えられるが、いずれにせよやや病的かも。

 正直、音楽的にこの入れ子の構造を解釈するのは無理かも知れないと思う。彼女らの置かれた社会的・ビジネス的・芸能的ポジションを踏まえなければ読み解けないのかも知れない(実際、アートとはある程度はそういうものだ)。
 じゃあ、と踵を返すと、あの魅力的なイントロが鳴り始めるふと「そう言えば、俺も解放されたかったかも知れない(何から?)」と思う。けったいな時代だなあ・・・。

(佐藤優太)




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(全てType-Bなのは・・・ゴホゴホ)