2013/07/19

Love Is In The Air/AAA


キラキラ・ミュージカル・アイドル


ミュージカル音楽のようだ、というのが、本作のサビでフィーチャーされた男女混声のコーラス・パートを聴いたときの第一印象。そう、ほんとミュージカルみたい。やたらと技量が高い上に抑揚がハッキリしているため、時々その肉体感すら感じてしまう歌やラップも、ミュージカルの役者のそれとよく似ている気がする。歌にもダンスにも妥協しないというAAAというグループのコンセプト、彼らの所属レコード会社が持つ育成システム、そして何よりも彼ら自身の人並み外れた努力が、彼らにそうした個性を授けたのだろう。アイドルと呼ぶにはかなり異形に映らなくもないが、本来的な意味ではむしろこっちを指すのかも。

彼らの個性を踏まえてかは分からないが、本作はリリックもミュージカル的。大雑把に言えば、“夏と恋”というありがちなテーマを持つリリックなんだけど、主人公の1人称の視点から描かれる“ストーリー・テリング型”の歌詞ではなくて、複数の人物の視点が混在する“群像劇型”の歌詞になっているところが個性的と言えば個性的で、このグループの持ち味にハマってる。

ドッカン・ドッカン打ち鳴らされるハウスのビートや、幾重にも折り重なるシンセのメロディは、そうした群像劇の背景にある開放的なムードを表現しようとしたのだろう。特に、後半に進むにつれ盛り上がっていくシンセのメロディの抜き差しの細かさはなかなかに圧巻・・・なのだが、ヴォーカルを引き立てるためか、それぞれのメロディの分離がイマイチで団子状態に聴こえちゃうのはちょっと残念。実力も個性もあるパフォーマーが揃っているだけに、このあたりのプロダクションとのバランスについて最適値を探すのはなかなかしんどいだろうが、全部がばっちりキマッたときの爆発力もすごそう。




国道ポップス


AAAの37枚目のシングル『Love in The Air』。四つ打ちを基本としたミドルテンポの楽曲で、男女混合のメンバーそれぞれの特徴を生かすため、メロ、サビともに数種類のフレーズがあり、それが淀みなくつながっていく。全編に渡って非常に伸びやかなメロディーと、爽やかで耳障りのいい音作りが印象的。

そればかりを言い過ぎるのは一面的だけれども、AAAには「イニシャルD」の主題歌でデビューして以降、断続的なキーワードとして「車で流して映える音楽」というのがあるように思う。この曲に関しても、細かなプロダクションがメロディーに集中して、リズムはシンプルであり、先にも書いた通りまるでほかの何かを邪魔しないよう「聞き流しやすさ」に注意を払っているかのようだ。それは多分渋滞ばかりの都心ではなく、郊外の国道を気ままに走る風景だろう。(実際のコアなリスナーがどこにあるかは興味のあるところ)

嫌みのない音色、J-POPでは抜き出た歌唱力、男女混合ユニットでのダンス・パフォーマンスも含めた見せ方はどれをとっても完成度が高い。それが今の時代とどう接続できているかということについては少し難しいのかもしれないが、その接点があるとすれば「車」なのではないか。