2013/08/23

サザンオールスターズ/ピースとハイライト



サザンオールスターズ復習用ニューシングル


5年間の活動休止を経て結成35周年のタイミングでリリースされたサザンオールスターズ『ピースとハイライト』。前シングルの『I AM YOUR SINGER』が丁度5年前の同時期にリリースされているが、それも2年ぶりのシングルで、要は結成30周年のタイミングであった。

柔らかなシンセの音から始まり、桑田のコーラスに続いてトランペットによるゆったりと展開していくようなテーマがメインのイントロに移る。隙間が多くボーカルが前に出たオールドクラシックなロック風のAメロ、サザンの曲に度々登場するカスタネットのカタカタという音が記号的に使われているようにみえるBメロ、一旦Aメロに戻ってからサビ。サビ後半部分で桑田は裏声に歌い方を変え、アクセントを加える。『ピースとハイライト』から漂うのはまさしく「サザンオールスターズが帰ってきましたよ」という雰囲気だ。ボーカル、ギター、ベース、ドラムといった一般的な4ピース編成に加えてシンセ、パーカッションが元々いるというのも理由ではあるだろうけれども、今作には上で挙げてきたように「サザンらしさ」が意図的に配置されているように見える。そうした曲をやや勿体つけたようなイントロで聞き手を期待させながら聞かせていく。5年間の空白をあっという間に埋めてサザンオールスターズを完璧に思い起こさせるような曲だ。

(小林 翔)


単純なメッセージ・ソングに終始しない、トリックスターの片鱗


エレピの5音による下降フレーズと、エフェクトが掛けられ浮かんでは消えるギター&ベースの音が、星の降る夜を思わせるパートから曲は始まる。3小節目からはコーラスが入ってくるが、幻想的な雰囲気は崩れない。そのコーラスが、後の間奏部への伏線という意味でも重要な音程の揺らぎと通過すると、スネアのアクセントを切っ掛けにイントロは次の段へ。ベースとギターの存在感がぐっと高まり、いよいよバンドは揃い踏み。勇壮なホーンに象徴されるロック・バンドの登場だ。

バンドの登場を盛り上げた後は、桑田圭佑のヴォーカルを引き立てるべく、ヴァースではシンプルなバッキングへと移る。ここで桑田が歌うのは(一聴すると)平和主義に裏打ちされた反戦/反米/政府批判のメッセージを込めた歌詞。こんな情勢だし、色々思うところあって歌詞を綴っているのは分かるが、内容はちょっと大雑把。更に言えば、サザンのようなエスタブリッシュメントが、完成度は高いがポップスのクリシェもたっぷりな王道的ポップ・ロックに乗せて、この手のメッセージを歌うことに、コミットできない人がいるのも分かる。

ただ、前言を覆すようだけど、この曲は単純なメッセージ・ソングに聴こえない部分があって、個人的にはそこが興味深い。特に最終コーラス「愚かな行為も」という歌詞が「愚かな恋も」と掛かっているように聴こえるのとか、邪推かなと思いつつ、過去の過ちを忘れる人の愚かさを絶望すると同時に、そこにニヒルなロマンも感じてるような、サーカスティックな感性/トリックスター的な複雑さを見るようで、ちょっと好き。なのでYouTubeで交わされてるあの手の議論とか、ほぼ100%意味ないよ!

(佐藤 優太)