2013/08/09

サマラバ/シド




ヴィジュアル系の中に生き残る90年代


今年活動10周年となるシドのシングル『サマラバ』。いわゆるヴィジュアル系バンドとしてデビュー後、メイク自体は薄くなってはきているけれども、元々のイメージをある程度保ったまま活動してきた印象。ヴィジュアル系、というジャンルはグラムロックとかと同じようにバンドのヴィジュアルに定義が偏っているので音楽的には(ゴシック的な雰囲気を持つV系のバンドが多いにしろ)多種多様で、独特のフリを踊るファンとのライブも含め、今ではアイドルと並べて捉えられることも少なくない。

『サマラバ』は爽やかで夏らしいギターのイントロ、跳ねるようなギター・カッティングの裏で何層にも重なるギターやトランペット的な音色のシンセによるメロ、そこから四つ打ちのサビへと展開していくとにかく賑やかな曲。沢山の音を同時に並べながら組み立て、そこに直球で開放感のあるボーカルを乗せて一気にポップスとしてまとめてしまう。シドのこうした音や感覚は好きなミュージシャンとして黒夢やBOOWY、LUNA SEA、B'zといったバンドを挙げている通り、90年代の歌謡曲・JPOPに直接接続しているものと言っていいだろう。2000年代以降、R&B、ヒップホップといったビートが先行する曲が増えた中で(それでも売れるのはメロディアスな要素を持つものではあったが)数を減らしていた90年代JPOPはヴィジュアル系やアイドル、アニソンへと姿を変えて今に至っているのではないかと妄想をする。





大人になった?V系バンド


カッティング・ギター、スラップベース、ホーンにストリングスをフィーチャーしたディスコ・ロック・サウンド。ただ、基本的には抜き差しを含めたコードの展開と歌、BPMの早いディスコビートが曲を牽引していて、カッティング・ギターにせよスラップ・ベースにせよ、その用法は曲の根幹というよりは飾り。歌謡曲をベースに、モダン・ロックやディスコのアレンジを取り入れた、日本的ミクスチャー・ポップという印象かな。

そんな感じで、トラックにはほとんどV系の要素は残ってないのだけど、ヴォーカルの喉から絞り出すような歌い方には、まだV系の要素が残っている。でも、そもそもV系ヴォーカルのあの特有の声って、青年期に感じる居心地の悪さと、その反動としてのポージングの象徴だと思うんだけど、恋人と出掛ける夏の海で、いつもと違うシチュエーションに、改めて惚れなおしたわ。みたいな光景を描いた本作の中で、主人公が何に違和感を感じてるのか?というか、果たして違和感を感じてるのか?正直よく分からない。

様式美。と言われるとそれまでなんだけど、僕は様式に意味を求める分、様式美には全然興味がない。ディテールにこそ作家の本質が表れると思う。青年が大人になるのは当然で、それは全然悪いことではないのだから、もういっそのこと全部変えてしまって、もっと大文字のポップへと振り切ってもいい。よく「V系のバンドは成功すると次第に化粧が薄くなる(=既存のファンを切っていく)」と言われるけど、ファンよりも芸術に誠実でいるってのは素晴らしいことじゃないか。