2013/09/06

Especia/ミッドナイトConfusion




ソングライターとしてのSAWA


大阪を拠点に活動する6人組のガールズ・グループ、EspeciaSCRAMBLES所属のSchtein&Longerが中心となり制作された楽曲は80年代AOR/シティ・ポップ的。甘めのメロディー、かつファンキーな楽曲がいちいちライブ映えして、たまたま見たイベントで一発でハマってしまった。そうした楽曲のイメージと、ど派手で古着的なレトロさを持つ衣装などのイメージから「バブル系」アイドルと呼ばれることも。80年代後半から90年代初頭という実際のバブルの時代と、彼女たちを形作る要素とはずれがあるような気もしなくもないが、彼女たちにとって初シングルとなる『ミッドナイトConfusion』はこれまでの楽曲からぐっと「バブル」に寄せてきた印象。理由は明確で、作詞作曲をSAWAが担当したことによる。

デビュー当初のダンス・ミュージック中心の活動を下敷きにしながら、シンガーソングライターとしてよりポップスに寄せた形で自身のアルバムや、楽曲提供を行うようになったSAWA。いくつもの陽性な音が散りばめられた楽曲は自身/提供いずれかを問わず共通している。それは「ミッドナイトConfusion」にも当てはまる一方で、抑えられた低音、隙間の多いトラック、4ビートを基本とする複雑すぎないリズム、とバブル期のエレポップ(と90年代JPOP)と合致する要素を用いてEspecia向けに仕上げている。

8月の東京でのEspeciaワンマンライブではゲストとして一緒に「ミッドナイトConfusion」を歌っていたけれども、ソングライターSAWAとしての懐の深さを感じさせる良曲だと思う。
(小林 翔)

恋の媚薬 〜不安と昂揚とミラーボール〜


80年代のAORやディスコからの参照で、春から夏にかけて話題をかっさらったEspecia(from 大阪)。と言いつつ、実は僕は以前の作品は未聴。けど今回聴いて、前評判よりモダンな作風だと思った。「Dam-Funk辺りにも通じるモダン・ブギーのサウンドをベースに、メロディや楽曲構成に近年のアイドル・ポップからの影響と批評的な展開も感じられる、非常によく練られたポップス」。多少強引だけど、まずはそんなアウトラインを引いてみる。

イントロはPVの感じそのまんま。メインのフックである「Eyes On Me〜♪」というコーラス、機械的なファンク・ドラムとクリスタライズドされたシンセが同時に登場するスタートから、8小節進んで、メロディに対してちょっと上ずったようなコードが重なってきて、ガリガリガリッと変調するという展開が、楽曲全体のエコー=残響が提示され、それが徐々に調整されて曲に対してフォーカス&チューンインしていくという感じに聴こえる。

で、主人公の女の子。別に恋愛経験が少ないワケじゃないんだけど、どことなくミステリアスな雰囲気クソイケメンに翻弄されっぱなし。しかも、まんざらでも無さげ。むしろ、ままならない恋愛のスリルまで楽しもう。という、一種のファイティング・ポーズすら辞さない。良く言えば、ちょっと健気なビッチ系? 16ビートを基調とした入り組んだビートや、ヴォーカル・メロディを支えるコード音の少なさ(特にヴァーす)が、彼女の感じてる不安を、キラキラッと飛び交うシンセやシンセベースの類いのウワモノが、彼女の感じている昂揚感を、それぞれに楽曲にトレースして行く。

不安と熱中。相反するとも言える(本当は違うけど)二つの感情が入り乱れる様子を描いた一曲に、Especiaチームは『深夜の混乱』と名付けた・・・ん?混乱?ってことは、実はこの子、意外とクラブ慣れしてなくて、ちょっと背伸びしてるだけの、おぼこい子なのかも。とか思えてきた。その男、きっとロクなやつじゃないからやめなよ!とか、妙な親心が沸いて来る、副次的な作用も味わえます。

(佐藤 優太)